医学部受験に向けた予備校の選び方:4種類の予備校・塾と向いている人、相場

医学部受験対策に向けて予備校を選ぶとき、

  • 「とりあえず大手の予備校を考えようかな」
  • 「家の近くにある予備校に行こう」

と考えることは多いものです。

ただ、医学部に向けた受験勉強はハード。質の高い学習ができる環境を、予備校にも求める必要があります。

ベストな予備校をしっかりと選ぶために、ここでは予備校選びのポイントを解説します。

目次

医学部の受験対策をできる予備校は、大きく4種類

まず、塾や予備校といっても、大きく4つの種類があります。

  • 大手予備校
    全国的に知名度が高い、河合塾・駿台・東進の3予備校
  • 医学部予備校(医学部専門予備校)
    医学部受験を専門にしている予備校
  • 学習管理塾(コーチング塾)
    英語や数学の授業ではなく、学習計画の作成・管理が中心の塾
  • オンライン塾・予備校
    オンラインで授業を受けられる塾・予備校

どれが1番良いかは人によって変わるため、それぞれの特徴を知ることが必要です。

大手予備校は授業がメイン。学習管理は薄めで、「質の高い授業があれば、自分で勉強できる」という人向け

メリット ・一流講師の授業
・費用がお値打ち
(年間100〜150万円)
デメリット ・サポートが薄め
・質問しにくい
向いている人 ・授業を元に自分で勉強できる人

河合塾や駿台などの大手予備校には「医進コース(医学部進学コース)」があり、一流の先生による授業を受けられるのが大きなメリット。その反面、個別指導ではなく大教室で受ける集団授業のため、「1人1人に合わせたきめ細かいサポート」という面ではほかの予備校・塾に劣る面があります。

コースも国公立医学部コース・私立医学部コースに分かれていますが、細分化はされていません。そのため、ざっくりひとくくりにされる部分もあります。

大手予備校がおすすめなのは、「とにかく質の高い授業を受けたい」という人。わかりやすい授業があれば、あとは自分で勉強を進められる人に向いています。

年間の学費は既卒生でも年間100〜150万円ほど。もちろん安くはありませんが、医学部専門の予備校よりお値打ちです。

医学部予備校は授業メインで、少人数または個別指導。学習管理はきめ細かくしてくれるところもあれば、薄めのところもある

メリット ・社会人プロ講師による授業
・サポートが手厚い
・医学部専門で、情報が豊富
デメリット ・大手よりは講師が劣る
・費用が非常に高い
(年間300〜1,000万円)
向いている人 ・予算が合う人
・手厚いサポート・医学部の情報がほしい人
・学力が低いけれど、医学部に行きたい人

医学部受験を専門にする医学部予備校は、「手厚さ・面倒見の良さ」がメリット。学力に不安がある人からある程度の実力がある人まで、医学部受験に向けてトータルサポートしてもらえます。

医学部予備校の先生は、医学部受験レベルの指導をできる社会人講師が中心。ただし予備校によっては現役医学生を採用していることもあります。大手のような一流講師・トップ講師ではないものの、実力のある先生がほとんどです。

医学部予備校はどこも授業数や授業時間が多く、スタッフによる定期面談・医学部受験の情報量・スムーズな質問対応・学力に合わせたベストな志望校の選定と受験スケジュール管理・集中して勉強しやすい自習スペースなど、充実した環境を整えています。

予備校ごとに力を入れている点は異なり、校舎が全国にある最大手の「メディカルラボ」は完全1対1指導。YMS(東京)・野田クルゼ(東京)・メビオ(大阪)などは1校舎のみで高い実績を誇り、長年のノウハウと医学部受験に精通した実力派講師が多数在籍しているなど、特色があります。

ただ、個別対応・手厚いフォローをすればするほど予備校のコストは増え、学費も高くなります。そのため医学部予備校の学費は年間300万円ほどでもお値打ちなほうで、500〜800万円ほどが相場。講習や寮費を含めると総額1,000万円ほどになることもあり、追加費用も想定して予算を確認する必要があります。また、これだけの費用をかけるからこそ、「高いから良いだろう」ではなく、きちんと比較検討することも大切です。

学習管理(コーチング)塾は、授業はゼロか少なめが一般的。自習ができる人向け

メリット ・やるべきことで迷わない
・市販の参考書・問題集を使える
・費用がお値打ち
(年間50〜150万円)
デメリット ・講師は大学生(東大生や現役医大生)が多い
・自習を進められないと、効果が薄い
向いている人 ・自習を自分で進められる人
・大学生の先生で問題ない人

「武田塾」を筆頭に、最近増えているのが「学習管理塾・コーチング塾」。以前は塾や予備校の授業といえば「英語や数学の指導」でしたが、最近は状況が変わりつつあります。

今や良い参考書や問題集はたくさんあり、「スタディサプリ」のような自宅で一流の先生による映像授業を受けられるサービスも普及。つまり予備校や塾の授業でなくても誰もが質の高い学習をできるチャンスがあり、課題は「いかに良い授業を受けるか」ではなく「教材を計画的にやり切れるかどうか」にシフトしつつあります。

こうした中、登場したのが学習管理塾。「自分に合った教材の選定」「毎週の綿密な学習計画と、その進度チェック」「自習でわからない点の解説・アドバイス」などが授業で行われます。参考書を読んだり映像授業を見たりして、自分で勉強を進められるなら、目標に向けて効率的な学習ができます。

ただし逆に言えば、自習がきちんとできない、参考書を「理解したつもり」になりやすい場合、管理だけでは学力が伸びません。学習管理塾でも授業があるところもありますが、どうしてもスポット的になりやすい点には注意が必要です。

また、学習管理塾の先生は多くの場合、現役の大学生。受験生と年齢がとても近いことが多いですが、良き先輩のような存在として指導してくれます。また、医学部受験の場合、東大生や現役医大生など、医学部受験に対応できる先生が担当となるのが一般的です。

オンラインの塾・予備校は、自習の管理が薄くなりやすい。自分でしっかり勉強できそうかは要確認

メリット ・自宅で授業を受けられるため効率的
・費用がお値打ち
(年間50〜150万円)
デメリット ・講師は大学生(東大生や現役医大生)が多い
・自習を進められないと、効果が薄い
向いている人 ・自習を自分で進められる人
・大学生の先生で問題ない人
・モチベーションが高い人

校舎に行かず、オンラインで授業や学習管理をしてもらえる塾・予備校もあります。自宅で授業や面談を受けられてそのまま自習もでき、「オンライン自習室」という、緊張感を保って自習しやすいサービスがある塾も多いです。

オンラインの塾や予備校は効率的に勉強できて良いですが、「先生やスタッフとの距離が遠く、目が行き届きにくい」というのはデメリット。自習や課題をどのくらいしっかり取り組んでいるかがわかりにくいため、特にモチベーションの低い人が利用すると全く伸びずに終わってしまうことがあります。

最近はオンラインで学習管理をしてくれる塾が増えていますが、本当に頑張ろうと思えるか、合っていそうかは確認が必要です。

それぞれの予備校が向いている人:学力・モチベーションの高さである程度は決まる

上で紹介した4種類の塾・予備校は、学力と医学部受験へのモチベーションである程度の向き不向きを判断できます。

医学部受験の予備校分類

筆者の個人的な主観もありますが、ざっくりとした分類は上のようなイメージ。

基本的に大手予備校、オンラインの塾・予備校、学習管理塾は「医学部へ行きたい」というある程度のモチベーションがあることが前提。モチベーションを引き上げるところから見てもらえるのは、面倒見が良く、医学部レベルまで授業が対応している医学部予備校一択、ということになります。

モチベーションが高く、質の高い授業さえあれば自分で勉強できるなら大手予備校

医学部受験や勉強へのモチベーションが高く、「あとはわかりやすい授業を受けられればいい」という人には、河合塾や駿台の医進コースがおすすめです。カリキュラムに沿って授業を受け、自習で量を確保することで、質の高い学習ができます。

教材は参考書・問題集・映像授業で十分と考えていて、定着度の確認や計画の管理をしてほしいなら学習管理(コーチング)塾

ある程度のモチベーションがあり、「教材は参考書や問題集で十分だし、授業も映像授業で勉強できる」という場合、学習管理塾(コーチング塾)が良いでしょう。ほかの塾や予備校でも学習管理や計画の作成はしてもらえますが、学習管理塾はこれを専門にしているため、より細かくやるべきことを決めてくれます。

あとは計画に沿って勉強できるか、参考書や問題集を正しく理解できるかがポイントで、できれば偏差値50前後くらいあるほうが学力は伸びやすいはずです。

自分の意思が弱く、細かくサポートしてほしい。今の学力が低い。医学部受験に向けて万全の環境を整えたいなら医学部予備校

医学部予備校は費用が高額ですが、それだけ環境が整っていてフォローも手厚く、モチベーションの低い人でも引き上げてくれる可能性があります。授業がたくさんあるため半強制的に勉強量が増え、学力が少しずつ上がることでやる気も前向きになってくることが多いです。

また、予備校のスタッフも面談や日々の声かけでサポートしてくれて、「いつも見てくれている」という安心感が「頑張ろう」という気持ちにつながります。

ただ、どんな予備校でも限界はあります。偏差値30や40の人でも必ず引き上げられるとは言い切れず、「本当に、まったくやる気がない」「いくら言っても聞かない」という人は、いくら高額な予備校でも難しいです。「お金さえ払えば、あとは合格させてくれるんでしょ?」というスタンスでは、ただ学費を払うだけになりかねないので気をつけてください。

自分できちんと勉強できる。授業や学習管理を効率的に受けたいならオンライン塾・予備校

「受験に向けて頑張ろう」という気持ちが強く、自分で勉強を進められるなら、質の高い学習を効率的にできるオンラインの塾・予備校がおすすめ。授業・自習・面談と自宅で全てを完結でき、普通ならどうしても必要な移動時間を勉強に充てることができます。

ただ、逆にやる気が低い、自分から勉強する姿勢が弱い場合、オンラインはまったく学習効果が期待できません。物理的な距離が離れているため先生やスタッフの声も届きにくく、サボろうと思えばいくらでもサボれてしまい、自習をどれくらいきちんと取り組んでいるかもチェックしにくいです。

最近は「自宅で勉強できて手軽・安心・効率的」ということでオンライン塾や予備校に興味をもつ人も多いですが、高いモチベーションが大前提。授業を受けつつ、自習もしっかりできる人向けです。

医学部受験は膨大な勉強が必要。集中して勉強するため、医学部予備校の寮を利用する人も多い

医学部対策を専門にしている医学部予備校は、寮を用意しているところも多いです。

医学部に向けての勉強は、量も質も重要。1日10時間以上勉強することも多いため、集中するためや移動時間を省くために寮を利用するのも一般的です。また、「この予備校で勉強したい!」と考えて遠方から入塾する場合も、寮を利用することになります。

医学部予備校の寮は2種類あり、

  • 専用寮:予備校の塾生だけが入居できる寮
  • 提携寮:ほかの予備校生や一般の方も住んでいる寮

があります。どちらもアパートではなくマンションが一般的で、専用寮のほうが寮母さんによる声かけ・栄養バランスに配慮した食事・生活に必要な家電が揃っているなど、受験勉強に特化した環境になっているため、良い環境であることが多いです。

寮費は予備校や物件にもよりますが、月7万円ほどが相場で、諸費用込みで年間100万円ほどが目安。

「自宅から通うほうが、余計なストレスがなくていい」と考える人と、「この際、環境も一気に変えるほうが集中できる」と考える人に分かれると思いますが、家族で相談して決めてみてください。

ほとんどの予備校は、テストなしで入学できる。ただし学力の診断テストやクラス分けテストがある

以前はテストがあり、入りたくても入れない予備校・塾もありましたが、今は誰でも入塾できる場合がほとんど。入学テストが課されることはないと考えて良いでしょう。

ただ、入塾時に現状を確認するための「学力診断テスト」、集団授業のクラス分けをするための「クラス分けテスト」などが実施されることはあります。この成績によって入塾できる・できないが決まるわけではありませんが、試験があることは頭に入れておくと良いでしょう。

年間の料金相場は、大手予備校・学習管理塾:100万円、医学部予備校300〜1,000万円。「手厚さ」に比例する

予備校を検討するときには、費用も大切。上でも少し触れていますが、だいたいの相場感は下のようになっています。

予備校の種類 費用の相場
大手予備校 100〜150万円
医学部予備校 300〜1000万円
学習管理塾 50〜150万円
オンライン塾 50〜150万円

医学部予備校は圧倒的に高く、「ぼったくりじゃないの?」と思うかもしれませんが、社会人プロ講師の授業は安く見積もっても1回6,000円ほど。これを1日4時間、週5日(月20日)受けるとすると、月48万円(年間576万円)になります。つまり一見するとみやみに高額と思える医学部予備校の学費は、やはり相応のコストがかかるためなのです。

医学部受験に向けた膨大な授業をプロ講師から受けると、お金がかかるのは仕方ありません。大手予備校はこれを集団授業でカバーしていますが、医学部予備校はあえて費用を下げず、プロ講師による少人数授業または個別指導にしています。

授業を少なくすれば費用を抑えることはできますが、それだけ自分自身で進めたり、計画を立てたりする必要のある部分が増えます。参考書や問題集の独学や映像授業だけで医学部に合格できる人もいますが、多くの人は自己管理ができず、なかなか難しいもの。予算を踏まえて、ベストな予備校を選んでみてください。

予備校への直接相談・体験授業・校舎の見学は必須!ブランドや公式サイトの情報だけで決めないこと

予備校を決めるとき、「なんだかんだ、大手が安心だよね」「公式サイトの情報で良さそうと思ったから」という理由で予備校を決める人もいます。もちろんブランドや公式サイトの情報でもある程度のカリキュラムやサポート体制はわかりますが、本当に合うかどうかは、実際に見聞きして、体験するほうがよく分かるものです。

逆に言えば、「お金をかければいい」と考え、こうした手間を省くと、合わない予備校にお金を注ぎ込むことになりかねません。

下調べした情報である程度は候補を絞り込み、できれば2〜3校は実際に相談・体験をして決めるべき。多少の時間はかかりますが、こうしてしっかり決めるほうが相性の良い予備校・塾を選ぶことができ、合格にも近づきます。

自分に合った予備校を選ぶことで、合格への道がスムーズに

医学部受験に向けて勉強を始めるときは、予備校をしっかり選ぶことが大切。やみくもに選ばずきちんと自分に合う予備校を選ぶことで、合格への道がスムーズになります。逆に合わない予備校を選ぶと学力を伸ばしきれずに失敗することになるため、ここで紹介した内容を参考に選んでみてください。