大学医学部の選び方:国公立と私立の違い・目的別の適した大学

医師を目指すために医学部を受験する場合、大学を選ぶ必要があります。医学部は全国82校の大学にありますが、「医学部ならどこでもいい」というわけではなく、目的に合わせて選ぶべき。

ただ、各大学をどう選べば良いか、迷うこともあると思います。そこでここでは、「大学医学部の選び方」を解説します。

大学選びはとても大切!大学の分類と、目的に合わせた選び方の基準を知っておきましょう。
また、別ページで解説している「歴史を踏まえた医学部の分類」を理解しておくと、より大学選びがスムーズです。
【2020】医学部のある大学一覧(全82校)国立・私立医学部の歴史による分類

医師は「研究医」と「臨床医」に分かれる。どちらになりたいかで、志望校も変わる

まず、医師は大きく「研究医」と「臨床医」に分かれます。

研究医:大学で研究を行い、新しい医療技術や病気の治療方法を生み出す医師
臨床医:病院で働き、患者さんの診療や治療、手術をする医師。いわゆる「病院のお医者さん」

どちらも医師には違いなく、医学部に入って6年間学び、国家試験を受けて医師免許を取ることでなることができます。

ただ、研究医と臨床医は同じ医師ながら大きく方向性が違うため、大学によってどちらに重点を置いているかが違います。

大学医学部を大きく分類すると、「国公立 or 私立」×「ハイレベル or 標準」の4カテゴリー

大学医学部は大きく分けると、下のような4つのカテゴリーに分類できます。

【大学医学部の分類】

ハイレベル 標準レベル
国公立 旧帝大 旧制医科大
旧医専
新設医科大
私立 私立御三家 旧医専
新設医科大

医学部をハイレベルと標準レベルで分けるのは、難易度が医学部の歴史と連動しているため。基本は「レベルが高い=医学部として歴史がある」と考えて良いです。

国公立大学の旧帝大(東大・京大・阪大・北大・東北大・名大・九大)は、82校ある大学医学部の中で最も歴史が長いです。医学に関する研究に力を入れているため、研究医になるのに適しています。

私立の御三家(慶應義塾大・東京慈恵会医科大・日本医科大)も私立医学部のトップ3校で、研究に重点を置いています。

国公立の旧制医科大・旧医専・新設医科大、さらに私立の旧医専・新設医科大は医学部の難易度としては標準で、主に臨床医になるためのカリキュラムが充実しています。これらの大学は明治・昭和の時代は「医学専門学校」という臨床医の教育をしていた学校のため、臨床医を目指すのに適しています。

こうした全体的な分類が分かったら、あとは大学の場所や自分の学力で目指せそうな偏差値の大学、学費で決めれば良いでしょう。

目的別、大学医学部の選び方

ここから、さまざまな目的別にどの医学部が良いかを紹介します。「自分はこの道に行きたい」というイメージがすでに決まっているなら問題ありませんが、まだ迷っている場合は参考にしてほしいと思います。

学費を抑えて医師になりたい → 国公立大学の医学部

私立大学の医学部は、学費がハッキリ言って「超高い」です。

医学部は6年間のカリキュラムですが、お値打ちな大学として有名な順天堂大学でも6年トータルで2,000万円ほど。3,000万円で普通くらいで、高い大学は6年で4,000〜5,000万円かかることもあります。

これはもう、郊外なら家が建つ金額です(笑)もちろん医師は高収入なので一人前になればモトは取れますが、それでも金銭的なハードルは相当に高いです。

これに対して国公立大学の医学部なら、6年間で350万円ほど。私立に比べると、圧倒的にお値打ちです。

国公立の医学部は毎年人気ですが、学費は大きく関係しています。難関ですが、「絶対に医師になりたい」という強い気持ちで目指しましょう。旧医専や新設医科大に属する地方国公立なら、ある程度は狙いやすいです。

医師として働きたい病院 or 働きたい地域が決まっている → その地域の医学部(国公立・私立どちらでも)

  • 「あの病院で働きたい」
  • 「千葉に住んでいるから、千葉で医師として働きたい」

上のように働きたい病院や場所が決まっているなら、そこに近い大学の医学部を目指すと良いです。

たとえば千葉大学の医学部に行けば、千葉県内の医療に関する情報も大学のときから得ることができます。また、卒業後に地元で医師を目指す人も多いため、同じ大学出身の医師もいるはずです。

働きたい病院や場所に近い大学が複数あり、国公立も私立もあるなら、学費やレベル、大学の雰囲気や理念で選ぶと良いでしょう。

勉強にすごく自信があるわけではないけれど、臨床医になりたい → 標準レベルの医学部(国公立・私立どちらでも)

「正直、今は医学部に受かれそうな学力はない・・。でも何とか医師になって多くの人の命を助けたい!」

こんな場合は医学部でも標準レベルの旧医専や新設医科大を志望校にすると良いです。国公立と私立はどちらでも良いですが、国公立のほうが人気は高く、倍率も上がりやすいです。予算が合うなら、私立の旧医専や新設医科大を狙うと良いでしょう。

どこかの大学医学部へ入れさえすれば、あとは自分の熱意次第。しっかり勉強して医師免許を取ったあとも努力を続ければ、良い医師になることはできます。

研究医になりたい or 大学病院で働きたい → 国公立の医学部

先端医療や難病、新薬などに関する研究は、主に国公立大学が運営する大学病院で行われています。

患者さんの治療や手術をする臨床医ではなく研究医になりたい、または大学病院で働きたい場合、国公立大学の医学部を目指しましょう。

ちなみに旧帝大は研究医寄りですが、国公立の旧制医科大・旧医専・新設医科大は研究医と臨床医、どちらにもなりやすいです。これに加えて学費が安いというメリットもあるため、国公立医学部は人気となっているわけです。

医師として最先端の研究をしたい、最高峰を目指したい→ 旧帝大の医学部 or 私立御三家

学力に圧倒的な自信があり、医師としても高いレベルを目指すなら、最高峰レベルの大学を目指すと良いです。旧帝大または私立御三家がこれに当てはまります。

おそらく旧帝大医学部や私立御三家を志望校にする人は、その大学を目指す目的もハッキリしているはず。医師は学力の高さだけでなく、「人の命を助ける」という使命感が大切な職業です。「自分の偏差値が高いから、東大理3を目指そう」のような理由は避けましょう。

気になる大学はオープンキャンパスも参加するべき

ここまで紹介した基準を参考にすれば、候補の大学はある程度絞られるはず。あとは実際に大学を見に行って第1志望を決めるのも良いです。

各大学ではオープンキャンパスを開催していて、毎年夏ごろに行われることが多いです。オープンキャンパスでは大学内の施設や研究設備などを見ることができるほか、入試情報なども教えてもらえるため、気になる大学は参加しておくと良いです。大学の公式サイトを見ると、オープンキャンパス情報が出ているはずです。

インターネットや資料だけで情報を得ても、自分にベストな大学を決めるには直接見てみるのがイチバンです。医学部受験は勉強も大切ですが、情報収集もとても大切です。

なりたい医師のイメージ・目標がハッキリすると、勉強に集中しやすい!

行きたい大学やなりたい医師のイメージを考えると、自分の「目標」がハッキリします。

人は「よし、この目標をクリアするために頑張ろう!」と本心から思えると、大きなパワーが発揮できるものです。大学選びをしっかりすることで医学部受験に対するモチベーションも上がり、勉強に集中しやすくなるはずです。

医学部の入試は各大学とも難易度が高いですが、強い熱意があればきっとクリアできるはず。ぜひ頑張ってくださいね!