医学部受験に向けて勉強するなら、大手予備校も良いですが、医学部受験を専門にしている「医学部予備校(医学部専門予備校)」もおすすめです。やはり医学部に特化してカリキュラムやサポート環境を整えているため、その充実度は大手予備校を上回ることが多いです。
ただ、医学部予備校は学費がとても高く、既卒生の場合は年間500〜1,000万円ほどかかるのがデメリット。大手予備校や映像授業などでも医学部に合格することはできるため、「本当に医学部予備校の環境が必要なのか」はよく考える必要があります。
ここでは、医学部予備校の特徴と大手予備校との比較、学費について解説します。
医学部予備校の主な特徴・メリット:大手予備校との大きな違いは、手厚さ・面倒見の良さ・情報量
- 高い実力のプロ講師による、少人数または個別指導。
- 医学部の受験対策を専門にしているため、情報が豊富。
- 授業時間が多く、復習にも力を入れる。
- サポートが手厚い。定期面談・学習計画・進捗の管理・声かけ・相談など。
- 医学部入試を分析した、オリジナルテキストがある。
- 勉強量確保のため、自習室が早朝から空いている。
- いつでも質問できる環境が整っている。
- 2次試験で実施される、小論文・面接も対策してくれる。
- 現役の医学生がチューターとして在籍している。
- 寮があり、受験勉強に集中できる。
- 周りも医学部受験生で、一緒に頑張れる。
- 入塾テストはなく、誰でも医学部を目指せる(上位コースはテストが実施される予備校あり)
基本的に予備校はどこも、授業の質にはこだわっています。医学部予備校は大手予備校ほど一流の先生が指導してくれるわけではないものの、医学部受験に強いプロの先生が授業を担当。つまり授業だけで見ると、そこまで差がありません。
医学部予備校が大手予備校と違うのは、「手厚さ・面倒見の良さ・情報量」。
医学部を設置している大学は国公立・私立含めて全国に82校ありますが、医学部予備校は全ての医学部について詳しいデータを蓄積。その情報を元に生徒さんの学力・志望校に合わせたカリキュラムや受験戦略、いつでも受け付けてくれる質問対応や定期面談、スタッフによる日々の声かけなど、きめ細かい指導・サポートをしてくれるのが特徴です。
また、医学部予備校はそれぞれで独自の指導方針をもっていて、特徴が違います。有名・人気な予備校の特徴を挙げると、以下のようになります。
ちなみにメディカルラボや富士学院は医学部予備校の中でも有名ですが、大手だからといって絶対に良いわけではありません。ベストな予備校は人それぞれ違うため、必ず比較検討が必要です。
医学部予備校 | 校舎 | 授業形式 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
メディカルラボ | 全国 | 1対1 | ・医学部予備校の最大手。河合塾グループ ・集団授業なしの完全1対1指導 ・全国各地に校舎あり |
富士学院 | 全国 | 少人数 or 1対1 |
・メディカルラボに次ぐ大手 ・少人数授業または1対1指導 ・大学・富士学院OBとのつながりが強い |
北九州予備校 | 九州 | 少人数 | ・九州エリアの人気予備校 ・他学部も対応。医学部は専門校舎あり ・九州エリアの医学部に強い |
PMD医学部予備校 | 九州 | 少人数 or 1対1 |
・北九州予備校と並ぶ人気予備校 ・家庭教師にも対応 |
YMS | 東京 | 少人数 | ・1校舎で高い実績。伝統の人気予備校 ・1対1指導もあるが、少人数授業が中心 |
野田クルゼ | 東京 | 少人数 or 1対1 |
・1校舎で高い実績。YMSと並ぶ伝統予備校 ・50年以上の長い歴史 |
メビオ | 大阪 | 少人数 or 1対1 |
・1校舎で高い実績。大阪で人気の予備校 ・1コマ3時間半の長時間授業 |
京都医塾 | 京都 | 少人数 or 1対1 |
・授業・講師・サポートまで完全フルオーダーメイド ・京大出身の社会人講師が多数在籍 |
代官山メディカル | 東京 | 少人数 | ・講師・担任に加え、学院長もサポート ・学院長の経験から、特に英語に強い |
メディセンス | 東京 大阪 |
少人数 or 1対1 |
・講師が自習にも同席する「テラコヤ」 ・ほかの塾生と一緒に頑張りやすい |
横浜予備校 | 神奈川 | 少人数 or 1対1 |
・学費がお値打ち。既卒生で年間300万円ほど ・自習まで学習計画を作成・管理 |
メディカル医進館 (ニチガク医進館) |
東京 | 少人数 | ・全分野を6ヶ月で習得×2周のカリキュラム ・自習では医学生チューターが巡回指導 |
Windom | 東京 | 少人数 or 1対1 |
・YMS出身の先生が設立した予備校 ・授業を担当する講師が夜まで質問対応 |
メディカルフォレスト | 東京 北海道 |
少人数 or 1対1 |
・女子学生の合格者が多い ・基礎学力や礼節も重視 |
アシリ | 東京 | 1対1 | ・完全1対1指導 ・快適に集中できる学習環境 |
メディック名門会 | 大阪・神戸 | 1対1 | ・完全1対1指導 |
武田塾医進館 | 東京・大阪 福岡 |
1対1 | ・授業なし。細かい学習管理がメイン |
大手予備校と医学部予備校の特徴・メリット・デメリット比較
大手予備校と医学部予備校、どちらかで迷う人もいます。医学部予備校の基本的なメリットは、上で紹介したように「手厚さ・きめ細かさ」。ただ、より詳しく比較すると、以下のようになります。
大手予備校 医学部コース |
医学部予備校 | |
---|---|---|
授業 | 集団授業 オンライン |
少人数 1対1 オンライン |
講師 | 一流講師 | 社会人プロ講師 |
対応大学 | 国公立医学部 私立医学部 |
主に私立医学部 |
自習のサポート | 薄め | 手厚い |
自習室 | あり (大教室) |
あり (個室・専用ブースもある) |
自習室での質問 | しにくい | しやすい |
志望校対策 | 上位校以外は 個別の対策講座がない |
大学別の対策講座あり |
学費の目安 | 100〜150万円 | 500〜1,000万円 |
向いている人 | ・授業を聞いて自習できる人 ・学費を抑えたい人 |
・学力が低めの人 ・意思が弱い人 ・私大医学部志望の人 ・勉強量を確保したい人 |
医学部予備校は国公立大学の医学部対策もしてくれますが、私大医学部に力を入れているところが多いです。
国公立の医学部は合格のハードルが非常に高く、受験対策スタート時から高いモチベーションやある程度の基礎学力をもっている人が中心。医学部予備校の手厚いサポートを必要とせず、大手予備校の授業や市販の教材だけで勉強できる人も多いです。そのため必然的に、医学部予備校は私立受験に注力することになります。
大手予備校は授業の質が確かに良いですが、医学部は勉強の「質」だけでなく「量」も必要。大手予備校の授業を聞くだけでは、強い意志がないと膨大な学習量を確保しにくいです。そのため医学部予備校によるカリキュラム・サポートによる自習の促進は、意味があると言えます。
医学部予備校が向いているのは、偏差値50以下、勉強へのモチベーションが低い人
上の特徴を踏まえ、医学部予備校は医学部の中でも偏差値70を超えるような難関大学を受験する人にも良いですが、基本的には「基礎学力に不安がある人」「勉強へのモチベーションが低い人」におすすめ。医学部予備校では膨大な授業と自習がカリキュラムに組み込まれるため、ついサボってしまう人も勉強に向かわざるを得ない環境があるためです。
【医学部予備校が向いている人】
- 医学部受験に向けて、万全の環境で勉強したい人
- 勉強が苦手でだらけてしまう、言われないと勉強できない人
- 模試での偏差値が50以下で、私大医学部志望の人
- 予算が合う人
医学部予備校の学費相場は、既卒生:年間500〜1,000万円、現役生:100〜300万円ほど
医学部予備校に入りたいと思っても、予算が合わないと入学できません。医学部予備校の学費は年間500〜1,000万円ほどが相場(既卒生の場合)で、大手に比べて非常に高額。前もって考えておく必要があります。
また、医学部予備校の多くは学費を公式サイトに掲載していますが、たとえば年間300万円や500万円と記載があっても、多少余裕をもって800〜1,000万円ほど準備しておくべきです。
理由は追加授業・夏季講習・二次試験対策(面接・小論文)などで、プラスの費用が必要になるケースが多いため。また、公式サイトの金額は「入学金」や「授業料」で、その他の費用が明記されていないこともあります。
本来は実際にかかる合計金額がはっきりわかると良いですが、生徒さんによって学習プランが変わるため、仕方ない面はあるのかもしれません。ただ、「最初に払った費用だけでも高いと思ったのに、追加費用がかかるなんて困る」というトラブルが生じないよう、注意が必要です。
神奈川桜木町にある「横浜予備校」の医学部コースは既卒生で年間268万円(税込)のみとシンプルな料金体系ですが、こうした予備校はとてもまれ。多くの場合は追加費用まで視野に入れて考えておく必要があります。
医学部予備校はぼったくりではなく、高い学費には理由がある
大手予備校の学費:年間100〜150万円に対し、医学部予備校の学費は高額。その高さから「ぼったくりじゃないの?」「金儲け主義でしょう」と言われることもありますが、きちんと理由があります。
- 1対1または少人数の授業でコマ数も多く、人件費が高いため。
- 営業時間が8:00〜22:00のように長く、運営スタッフが必要なため。
- 校舎の立地が良いため。
- 個室の自習室や塾生1人1人に専用の自習ブースを設けている予備校も多いため。
もちろん高い費用だけ請求して授業・サポートの質が低い予備校に価値はありませんが、費用に見合うこだわりのサービスを提供する医学部予備校は意味があります。
1対1または少人数の授業でコマ数も多く、人件費が高いため
医学部予備校の先生は社会人のプロ講師が中心で、1時間の授業料は7,000円〜1万円ほどが相場です。
たとえば1時間の授業料が8,000円、1コマ2時間の授業が1日2コマ、授業のある日が週5日あるとします。この場合、授業料だけで月64万円になる計算(8,000円×2時間分×1日2コマ×週5日×4週分)で、これだけでも年間768万円になる計算。年間500〜1,000万円という金額は、これだけで納得できるはずです。
医学部予備校は少人数授業などで生徒さんをまとめることでコストを抑えていますが、それでも高額になるのは、やはり仕方ない面があります。
営業時間が8:00〜22:00のように長く、運営スタッフが必要なため
医学部予備校は校舎の開校時間が長いです。夜はほかの塾や予備校と同じ22時までが一般的ですが、朝8時ごろから自習室を開放しているところもあります。
開校している間はスタッフの人件費や電気代が必要であり、それだけ運営費用がかかります。
校舎の立地が良いため
医学部予備校の多くは立地が良く、都市部の主要駅から徒歩で数分など、生徒さんが通いやすい場所にあります。アクセスの良い場所にある校舎はそれだけテナント代という家賃が高く、学費も高くなりやすいです。
個室の自習室や塾生1人1人に専用の自習ブースを設けている予備校も多いため
予備校によってはビル1棟が丸ごと校舎になっていたり、個室の自習スペースをたくさん確保していたりするところもあります。
医学部受験は「学習量」が必要で、1日10時間以上の勉強を続ける人も多いです。こうした長時間の勉強に集中して取り組めるよう、医学部予備校は塾生1人1人に専用ブースを設けたり、周りに邪魔されない個室を設けたりしています。
授業が行われる教室とは別にこうした自習スペースを確保するには、やはりそれだけ費用が必要で、学費が高くなる要因となっています。
医学部予備校の活用法、6つのポイント
医学部予備校は当然ですが、「入ったら合格できる」わけではありません。
「入学後、予備校の環境をどう活用するか」が大切です。
以下の6点は特に重要なため、予備校に入ったら意識しておきましょう。
- 予備校のカリキュラムを全面的に信頼する。
- 予備校の授業・テキストを完璧に理解する。参考書・問題集は数を絞る。
- 勉強の悩みや迷いは、自分だけで判断せず予備校の先生・スタッフに相談。
- 相談は必須でも、長々と時間を使わない。「問題を解けるようになる勉強」を最優先。
- 友達と一緒に頑張るのは良いけれど、メリハリをつける。
- 学習の「量」を確保するため、自習室はなるべく最後まで活用する。
予備校のカリキュラムを全面的に信頼する
多くの医学部予備校は、医学部受験対策に必要な環境は全て整っています。そのため予備校のカリキュラムを全面的に信頼して、集中的に学習しましょう。
「予備校だけで大丈夫?もっとほかにやるべきことがあるのでは?」
こんなふうに思うのもわかりますが、あれこれブレるほど遠回りです。
ほかの予備校や教材が気になったとき、「本当に授業の内容をしっかりと定着できているか?」を自分に問いかけてみてください。テキストの問題でさっと解けないものがあるなら、まだ定着度が甘いといえます。
迷ったり不安になったりする気持ちはわかります。ただ、こうしたときこそ、もう1度予備校に集中し直しましょう。
また、予備校を100%信頼するには、「ここで頑張りたい」と感じられるところを利用することが大切。資料やホームページの情報だけでなく実際に相談や体験授業を受け、信頼に値する予備校を利用しましょう。
予備校の授業・テキストを完璧に理解する。参考書・問題集は数を絞る
医学部を目指す人は、勉強熱心な人が多いです。参考書や問題集の情報もしっかり調べ、「あの参考書がいい、この問題集もいい」という評判をチェックしていることもよくあるもの。
ただ、予備校を利用するなら、まずは授業とテキストに集中するべき。「予備校の内容は完璧だ」と自信をもって言えるくらい、徹底的にやり込みましょう。
成績が伸び悩む人や不合格になるほど、予備校だけでなくさまざまな教材に手を出しがち。参考書や問題集は予備校のテキストに加えて、本当に必要なものだけに絞りましょう。
参考書や問題集を大量にこなすのは、一見すると良さそうに思えます。ただ、全ての教材を完璧に仕上げられる人はそういません。どの教材も中途半端な理解だと、医学部入試で合格点を取ることは難しいのです。
特に国公立の医学部を狙う場合は科目数が多く、教材が多すぎると手が回りません。予備校の授業やテキストは効率良く学力を伸ばせるよう考えられているため、「これだけで大丈夫なのか」と余計な不安をもたず、集中して取り組みましょう。
勉強の悩みや迷いは、自分だけで判断せず予備校の先生・スタッフに相談
勉強をする中で気になることや、進路で相談したいことが出てきたら、予備校の先生やスタッフに相談すると良いです。
医学部予備校の先生やスタッフは、医学部受験のプロ。今の学力が偏差値60に満たないなら、予備校でアドバイスをもらいながら勉強するほうが近道です。自己流にこだわるほど非効率になりやすいため、気をつけましょう。
特に偏差値60前後の人は、一般的な学力レベルではまずまず高いほう。そのため「自分は勉強ができる」とプライドをもってしまいがちです。ただ、医学部を受験するならより高いレベルを目指す必要があるため、今の自分にこだわるのは良くありません。
相談は必須でも、長々と時間を使わない。「問題を解けるようになる勉強」を最優先
予備校の先生やスタッフに相談するのは大切ですが、だからといって頻繁に長々と話をするのは禁物です。
人によっては受験への不安から、何かあるとすぐに相談したくなることがあります。また、1回の相談もだらだらと長く、「相談(雑談ともいう)していたら、半日も過ぎてしまった・・。まあ今日くらいはいいか(←今日だけではない)」ということもあるものです。
ですが医学部受験は時間との勝負。できるだけ問題に取り組む時間を確保する必要があります。スタッフに質問という名目でダラダラ話していると、勉強時間はすぐに減ってしまいます。
これを避けるには、「相談したいことをハッキリさせた上で、話す時間を決めておく」という方法が効果的です。
「20分、数学と物理の勉強の仕方を相談しよう」のように決めて相談すると、ムダな時間を使いにくくなります。何を聞きたいか明確にすることで自分が得られるものも多くなるため、やみくもに相談するのは避けましょう。
友達と一緒に頑張るのは良いけれど、メリハリをつける
予備校には、同じ医学部を目指す人がたくさんいます。同じクラスの人同士で仲良くなることもあり、こうした関係は大学入学後も続くことがよくあります。
友達と一緒に頑張ったり、刺激を受けたりすることはとても良いですが、メリハリは大切です。
- 「この問題、難しいよね〜」と話し込む。
- 「あの教材はいい、数学の◯◯先生はイマイチ」など、授業や教材の批評をする。
- 頻繁に雑談する。
こうした行動が多いほど、残念ながら医学部合格は遠のいてしまいます。
友達と話すのは楽しくてストレス解消になるかもしれませんが、長時間続けるのは禁物。また、ネガティブな話や授業・教材の批評は、学力アップにつながりません。
友達との時間も15分や30分のように時間を決めて、メリハリをつけて勉強に集中しましょう。刺激し合える良い仲間だからこそ、お互いの勉強時間をしっかり考えてあげるべきです。
学習の「量」を確保するため、自習室はなるべく最後まで活用する
医学部予備校には、自習室があります。朝8時ごろから夜22時まで開校している場合が多く、なるべく閉校の時間まで活用すると良いです。
- 「勉強時間も大事だけど、質が大事じゃない?」
- 「ただ22時までいても、意味ないでしょ」
こうした意見もあるかもしれませんが、医学部への勉強は「量」も「質」も大切。質だけでなく、勉強時間もしっかり確保しましょう。
医学部予備校の自習室は個室や塾生それぞれの専用ブースを設置していることも多く、集中して勉強できます。また、質問もすぐにできるため、自宅よりも迷わずスムーズに勉強しやすいです。
センスの良い一部の天才を除き、医学部を目指す人は圧倒的に努力しています。10時間くらいの勉強は当たり前と考えて、自習室が閉まるまで勉強すると良いです。
また、頑張っている姿は、誰かが見てくれているもの。予備校のスタッフや先生が「頑張ってるね」と気にかけてくれたり、特に頑張っているほかの受験生と仲良くなったりすることもあります。
予算が合い、万全の環境が必要なら医学部予備校はおすすめ。相談・体験授業で判断を
医学部予備校は大手予備校やほかの塾に比べると学費が高いものの、医学部受験に対応した指導と手厚いサポートがメリット。万全の体制で勉強に集中するなら良い環境といえます。興味がわいたら、候補の予備校に相談したり、体験授業を受けたりして、最終的に入学する1校を決めてください。