医学部予備校(専門予備校)の選び方:比較の基準・確認しておくべきポイント

医学部受験の対策を専門にしている「医学部予備校(医学部専門予備校)」はたくさんあり、「どこが良いのかわからない」ということもあるものです。

医学部予備校は独自の指導方針・カリキュラム・サポート体制などを整えていて、それぞれに特徴があります。「ここが1番良い」という予備校は人によって違い、自分に合う予備校を選ぶことがとても大切です。

ここでは駿台や河合塾などの大手予備校や一般的な塾ではなく、選択肢を医学部予備校に絞った上での選び方を解説します。

目次

医学部予備校を探す前に、まず考えておくべきこと3点

医学部予備校の候補を絞り込む前に、大前提として以下の3点を先に考えておきましょう。

  • 予算を考えておく。医学部予備校の相場は年間500〜1,000万円、高ければ良いものでもない。
  • 「本当に医学部予備校でないといけないのか」をあらためて考えて、目的をハッキリさせる。「手厚さ・面倒見の良さが必要かどうか」がポイント。
  • 医学部予備校に入れば受かるわけではない。自分の努力が必要なことを理解しておく。

予算を考えておく。医学部予備校の相場は年間500〜1,000万円、高ければ良いものでもない

医学部予備校は、一般的な塾や予備校よりお金がかかります。

【医学部予備校の学費相場】

現役生(高3まで):年間100〜300万円
既卒生(浪人生):年間500〜1,000万円

目安としては上のような金額で、医学部予備校の学費は非常に高いです。

まずはこの予算が大丈夫かどうかを確認してください。

「こんなに高いの?ぼったくりでは??」という意見もありますが、理由があります。

医学部予備校はハイレベルな入試に対応できるよう、実力の高い先生による少人数授業や個別(1対1)指導・スタッフによる手厚いサポート・個室の自習室などを提供しています。質の高い学習環境の整備にはやはり費用がかかり、それが学費に反映されているわけです。

また、勉強を進める中で「講習講座を取ろう」「授業数を増やそう」と方針転換をすることもあるため、ある程度の余裕を見ておくことが大切です。

医学部予備校の公式サイトでは学費500万円となっていても、800〜1,000万円ほどを用意しておくほうが無難。また、相談へ行くときに「必要な費用はこれで全てですか」と聞いてみるのも良いでしょう。

【主な医学部予備校の学費目安】

※講習や授業の追加などによる最初の予算オーバーを想定し、上限の目安は高めにしています。

予備校 既卒生 現役生 予備校 既卒生 現役生
メディカルラボ 500〜
800万円
300〜
500万円
メディカルフォレスト 200〜
500万円
100〜
300万円
富士学院 300〜
600万円
100〜
300万円
レクサス教育センター 200〜
500万円
100〜
300万円
北九州予備校 100〜
200万円
100万円
前後
横浜予備校 270万円 50〜
100万円
YMS 100〜
500万円
70〜
300万円
PMD医学部予備校 400〜
700万円
50〜
200万円
野田クルゼ 100〜
500万円
70〜
300万円
トライ式医学部合格 500〜
800万円
150〜
400万円
メビオ 500〜
800万円
100〜
300万円
メディック名門会 500〜
800万円
150〜
400万円
京都医塾 500〜
800万円
100〜
300万円
メディックTOMAS 500〜
800万円
150〜
400万円
代官山メディカル 200〜
800万円
100〜
300万円
東大蛍雪会 100〜
500万円
100〜
300万円
メディセンス 400〜
700万円
200〜
300万円
武田塾医進館 400〜
500万円
85〜
300万円

「本当に医学部予備校でないといけないのか」をあらためて考えて、目的をハッキリさせる。「手厚さ・面倒見の良さが必要かどうか」がポイント

医学部予備校は良いですが、ほかの勉強方法でも医学部に合格することはできます。「本当に医学部予備校の学習環境が必要なのか」はよく考えてください。

質の高い授業は駿台や河合塾などの大手予備校や、スタディサプリなどの映像授業でも提供されています。医学部予備校がほかの塾・予備校と違うのは、「1人1人に合わせた授業・サポートの手厚さ」です。

「計画を考え、勉強する中で弱い部分を重点的に復習して改善していく、高いレベルまで持っていく。情報は自分で調べる」という学習が自分自身でできるなら、医学部予備校は必要ありません。

医学部予備校に向いているのは、

  • 医学部受験に向けて、とにかく万全の環境がほしい人
  • 意思が弱いから、サポートが必要な人
  • 先生に1対1で教えてほしい人
  • 勉強が苦手で、学力に不安があるけれど、医学部には行きたい人

という人です。

医学部予備校に何を求めるのかをハッキリさせた上で利用すると、そのメリットを効果的に受けられます。

医学部予備校に入れば受かるわけではない。自分の努力が必要なことを理解しておく

当然ですが「医学部予備校に入りさえすれば、医学部に受かる」ということはなく、努力して勉強する必要があります。医学部予備校は医学部合格に向けて迷わず勉強できる学習環境・サポートを提供してくれますが、それを活用するかどうかは自分次第です。

  • 「高い学費を払うんだから、受からせてよ」
  • 「全然やる気がないけど、その気持ちを引き上げてくれるのがプロでしょ?」

医学部予備校の先生やスタッフは、最大限の指導やアドバイスをしてくれます。ただ、上のような他力本願のスタンスが強すぎると、正直なところ医学部合格は難しく、予備校にカモと思われても仕方ありません。

せっかくの良質な環境を最大限活用して努力できる人が、結局のところ医学部に合格するものです。逆に言えば「予備校の先生やスタッフを信じて頑張ろう」と前向きに考えて勉強を続ければ、それだけで合格の道を突き進んでいることになります。

医学部予備校の選び方、6つのポイント

ここまでを確認したら、医学部予備校を選びます。気になる予備校のホームページを見るとき、以下の6点を踏まえてチェックしてください。

国公立と私立、どちら志望か。国公立医学部は予備校により注力の度合いが変わる

医学部予備校は自分だけでは不安・勉強できない人が多く利用する傾向にあり、塾生さんの志望校も必然的にハードルの低い私立に偏ります。必然的に医学部予備校は、私立医学部の情報・ノウハウに強いところが多いです。

ただ、予備校によっては国公立医学部コースも整えています。まずは自分の学力・これから予想できる学習量・学費などから国立医学部と私立医学部、どちらを第一志望にするかを考え、国公立を目指す場合はそれに合わせて予備校を選びましょう。

【主な医学部予備校の、国公立コースの有無】

△:国公立専用のコースはないものの、国公立医学部受験にも対応している

予備校 国公立コース 予備校 国公立コース
メディカルラボ メディカルフォレスト
富士学院 レクサス教育センター
北九州予備校 横浜予備校
YMS PMD医学部予備校
野田クルゼ トライ式医学部合格
メビオ メディック名門会
京都医塾 メディックTOMAS
代官山メディカル 東大蛍雪会
メディセンス 武田塾医進館

個別指導と少人数授業、どちらが良いかを確認(組み合わせもある)

医学部予備校は大手予備校のような大教室での授業ではなく、3〜10名ほどの「少人数指導」か1対1の「個別指導」が一般的。どちらのほうが向いているかを考えておくと良いです。

少人数指導 個別指導
メリット ・1コマの授業料がお値打ち
・ほかの塾生と頑張れる
・「自分のクラス」ができる
・1対1で、きめ細かい指導
・すぐに質問しやすい
・授業予定の自由度が高い
デメリット ・個別対応が薄くなりやすい
・授業が合わないことがある
・ほかの塾生との関わりは薄い
・授業料が高くなりやすい

多くの予備校で既卒生(浪人生)は少人数授業がメインで、苦手科目の教科など、必要に応じて個別指導を追加で組み合わせるのが一般的。高1〜3年の現役生は学校が終わったあとに予備校へ行くため、時間に融通が利く個別指導が多いです。

ただしメディカルラボのように完全個別指導を売りにしていたり、YMSのように既卒・現役とも少人数授業を中心にしていたりするところもあり、授業スタイルは予備校によってさまざま。「自分はどちらが良いか」を考えておくと予備校を絞り込みやすくなります。

【主な医学部予備校の授業形式】

予備校 少人数 1対1
(個別)
予備校 少人数 1対1
(個別)
メディカルラボ メディカルフォレスト
富士学院 レクサス教育センター
北九州予備校 横浜予備校
YMS PMD医学部予備校
野田クルゼ トライ式医学部合格
メビオ メディック名門会
京都医塾 メディックTOMAS
代官山メディカル 東大蛍雪会
メディセンス 武田塾医進館

講師の質は「正社員講師 > プロ講師 > 学生講師(現役医学生・難関大)」

予備校により、どのような先生が在籍しているかは違います。基本的には駿台や河合塾などの大手予備校で授業を担当する先生がトップレベルですが、こうした先生が少人数指導や個別指導を受け持つことはありません。

医学部予備校で授業を行うのは、

  • 予備校に正社員として在籍する「常勤講師」
  • 社会人で経験豊富。高い指導力をもつ「プロ講師(非常勤講師)」
  • 難関大・医学部に在籍する「現役大学生・医学生」

が一般的。医学部予備校で多いのは、「正社員の先生(常勤講師)を採用せず、全て非常勤のプロ講師」というパターンです。

どの先生も高い実力をもっていますが、大きく違うのが「責任感」。

正社員の先生は授業以外の時間も予備校内で勤務していて、質問対応・カリキュラムや教材の作成・面談・ほかの先生やスタッフとのミーティング・過去問分析など、さまざまな業務をこなしています。

一方、非常勤の先生は授業以外の業務を担当せず、シンプルに授業だけを行います。分業されているのは良い面もありますが、「授業をすれば終わり」という感覚の人もいて、正社員の先生に比べると責任感は劣ることがあります。

難関大学や医学部に在籍する現役の大学生はメインの授業を受け持つことは少なく、「TA(ティーチングアシスタント。チューターともいう)」として質問対応や学習相談、個別指導などを担当することが多いです。今まさに大学へ通っているため、大学のリアルな雰囲気や学生生活を教えてもらえるのがメリットですが、指導経験はほかの先生に比べると劣り、バイト感覚の人も正直なところいます・・。

基本的には非常勤のプロ講師が多く在籍する予備校を軸として、強い希望があれば正社員講師のいる予備校や医学生・難関大生がいる予備校も検討すると良いでしょう。

【主な医学部予備校の在籍講師】

予備校 正社員 非常勤 大学生 予備校 正社員 非常勤 大学生
メディカルラボ メディカルフォレスト
富士学院 レクサス教育センター
北九州予備校 横浜予備校
YMS PMD医学部予備校
野田クルゼ トライ式医学部合格
メビオ メディック名門会
京都医塾 メディックTOMAS
代官山メディカル 東大蛍雪会
メディセンス 武田塾医進館

自宅から近い校舎か、寮に入って遠方の予備校へ予備校に入るのもOKか

医学部受験は膨大な学習量が必要なため、医学部予備校も勉強に集中できるよう、寮を用意していることが多いです。予備校が自宅から近い場所にあるなら通えば良いですが、

  • 集中したい。
  • 移動時間を少なくしたい。
  • 遠いけれど入りたい予備校がある。

という場合は寮を考えてみるのもおすすめです。

医学部予備校の寮は2種類あります。

提携寮:予備校が提携していて、スムーズに紹介してくれる寮。ほかの予備校生や一般の人も入居している。
専用寮:その予備校の塾生のみが入居している寮。

できれば専用寮のほうが、勉強に集中できる環境が整えられているためおすすめですが、提携寮でも問題ありません。必ず内見(下見)をして、安心して勉強や生活ができそうかは確認してください。

また、寮を利用する場合は寮費がかかりますが、提携寮・専用寮どちらの場合でも月7万円前後が相場で、年間トータル100万円ほどのイメージです。

【主な医学部予備校の寮】

予備校 提携寮 専用寮 予備校 提携寮 専用寮
メディカルラボ メディカルフォレスト
富士学院 レクサス教育センター
北九州予備校 横浜予備校
YMS PMD医学部予備校
野田クルゼ トライ式医学部合格
メビオ メディック名門会
京都医塾 メディックTOMAS
代官山メディカル 東大蛍雪会
メディセンス 武田塾医進館

勉強時間の多くを占める、自習環境も確認。自習をやり切れるサポートがあるかも重要

大手予備校の自習室が大教室であるのに対し、医学部予備校の自習室はより集中できる環境が整えられています。

例として以下のようなパターンがあり、設備は予備校や校舎によって違います。

  • 1人で集中できる個室・半個室
  • 机と机が仕切りで区切られ、集中しやすくなっている自習ブース
  • 塾生1人1人に与えられる専用ブース
  • 教材を持ち帰らなくて良い専用ロッカー

ほとんどの予備校は入塾前に校舎を見学させてもらえるため、勉強しやすいと感じる環境を選ぶと良いでしょう。

志望校が明確なら、対策講座のある予備校を選ぶのも良い

医学部予備校は、大学別の対策講座を用意していることが多いです。ただし全ての医学部の対策講座がある予備校はなく、校舎の周辺にある医学部の講座を中心に用意されています。

たとえば大阪に校舎がある人気予備校「メビオ」は近畿大学・関西医科大学・大阪医科薬科大学・兵庫医科大学などの対策講座があります。また、大手医学部予備校のひとつである「富士学院」は福岡校が本校で、福岡大学の医学部対策には特に力を入れている印象。

このように各予備校・校舎ごとで、「この大学に強い」という特徴があります。目標がハッキリしているなら、志望校の対策が充実している予備校を選ぶのも良いでしょう。

希望の条件から2〜3校に絞り、最後は実際に相談・体験・見学をして判断。多少の時間がかかるため、早めに検討を

希望の条件や公式サイトの情報から、入ろうと思う予備校を2〜3校くらいには絞れるものです。ただ、最終的に決め手となるのは、やはり実際に予備校へ行ったときの印象。

  • 入塾前の学習相談
  • 体験授業
  • 校舎の見学

これら3つを通して、最終的に入塾する予備校を判断しましょう。じっくり検討すると半月〜1ヶ月くらいはかかるため、予備校探しは早めに始めると良いです。

相談では「親身になってくれるか」をしっかり確認。医学部予備校は高額なため、適当なサービスは論外

まず大切なのは、スタッフの印象。「本当にやる気あるんですか?」「そんな気持ちで受験するんですか?」のように冷たい対応だったり、「何だか上手いこと言っているだけな気がする」のように、あまりこちらのことを理解してくれる様子でなかったりする場合、率直に論外です。

多くの医学部予備校は学費が高額。講師だけでなく、スタッフもしっかりとプロ意識をもっている必要があります。親身になって現状からの合格ルートを模索・分析・提案してくれる予備校を選びましょう。

体験授業は授業の内容・講師との相性・レベルに加え、授業時間の長さも合うか確認

体験授業は先生のわかりやすさや相性、レベルが合うかどうかなどを確認する良い機会。これに加えて意外と大切なのが、「授業時間」です。

予備校によって1コマの授業数は違い、たとえば

  • 駿台:50分
  • 河合塾:90分
  • 富士学院:100分
  • メビオ:210分

と、さまざまです。

医学部予備校は1コマ100分前後が一般的ですが、大阪にあるメビオは1コマ210分と長時間。個別指導の場合、時間を自由に決められる予備校もあります。

人によって「100分くらいが集中できて良い」「1コマでまとめて勉強できるから、長いほうがいい」のように向き不向きがあるため、体験授業を通してチェックしてみてください。

見学は特に、自習スペースや校舎内の雰囲気をチェック。寮を利用する場合は部屋・共用スペースも確認

校舎を見学させてもらうのも、予備校選びに大切です。校舎内で過ごす時間は「授業」と「自習」が大部分を占めるため、特に自習の環境はチェックしておくと良いです。

  • 自習スペースの環境
  • 塾生用ロッカーの有無
  • 質問・学習相談の環境
  • 校舎や寮までの移動時間

できるだけ自分が勉強しやすい環境を選びましょう。

医学部予備校はそれぞれに特長が違う。自分に合った予備校を選ぼう

医学部予備校はそれぞれで指導方針・学習環境・サポートなどが違い、どこに入ろうか迷うことも多いと思います。希望の条件を洗い出し、何を重視するかを考えることで、ある程度は絞り込めるため、あとは実際に予備校へ足を運んで決めると良いでしょう。できれば2〜3校を比較して、ベストな予備校を選んでほしいと思います。